副業禁止の処分が無効となった裁判事例|規定の捉え方【判例集】

何か新しい事を始める前に、そのリスク・問題を予想するために最も有効な方法は「過去の事例を確認すること」です。

ブームが起こっている副業も同様。始める前に過去の事例を調べることから始めましょう。

まず前提として副業が禁止される場合を確認しておきましょう。

(4) 裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であり、各企業においてそれを制限することが許されるのは、労務提供上の支障となる場合、企業秘密が漏洩する場合、企業の名誉・信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合、競業により企業の利益を害する場合と考えられる。

引用:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」

このように現状では、各企業が副業に対して制限を設ける事が許されるケースは

❶労務提供上の支障となる場合
❷企業秘密が漏洩する場合
❸企業の名誉・信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合
❹競業により企業の利益を害する場合

の四つになります。

これらを確認の上、副業・兼業促進に関するガイドラインに記載された過去の判例を見ていきましょう。

マンナ運輸事件(京都地判平成24年7月13日)

マンナ運輸事件【概要】

運送会社が、準社員からのアルバイト許可申請を4度にわたって不許可にしたことについて、後2回については不許可の理由はなく、不法行為に基づく損害賠償請求が一部認容(慰謝料のみ)された事案。

マンナ運輸事件【判決抜粋】

労働者は、勤務時間以外の時間については、事業場の外で自由に利用することができるのであり、使用者は、労働者が他の会社で就労(兼業)するために当該時間を利用することを、原則として許され(ママ)なければならない。もっとも、労働者が兼業することによって、労働者の使用者に対する労務の提供が不能又は不完全になるような事態が生じたり、使用者の企業秘密が漏洩するなど経営秩序を乱す事態が生じることもあり得るから、このような場合においてのみ、例外的に就業規則をもって兼業を禁止することが許されるものと解するのが相当である。

引用:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」

マンナ運輸事件【考察】

あくまで勤務時間外は私的時間であり、会社の管理が及ばないのが原則であることがわかります。

そして、冒頭でも説明した通り、それを会社側が規制出来る範囲については、

・企業秘密が漏れる可能性がある場合
・本業での業務に支障をきたす可能性が高い場合

などです。

判断が難しい場合もありますが、

仮に会社側から許可が下りなかった場合に、正当性を持って異議を唱えることは可能であり、

この事例の通り、個人が慰謝料を貰え、企業の責任を問われるケースもあることを知っておきましょう。

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東京都私立大学教授事件(東京地判平成20年12月5日)

東京都私立大学教授事件【概要】

教授が無許可で語学学校講師等の業務に従事し、講義を休講したことを理由として行われた懲戒解雇について、副業は夜間や休日に行われており、本業への支障は認められず、解雇無効とした事案。

東京都私立大学教授事件【判決抜粋】

兼職(二重就職)は、本来は使用者の労働契約上の権限の及び得ない労働者の私生活における行為であるから、兼職(二重就職)許可制に形式的には違反する場合であっても、職場秩序に影響せず、かつ、使用者に対する労務提供に格別の支障を生ぜしめない程度・態様の二重就職については、兼職(二重就職)を禁止した就業規則の条項には実質的には違反しないものと解するのが相当である。

引用:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」

東京都私立大学教授事件【考察】

形式上、兼業許可がされない場合であっても、

・兼業によって職場の秩序に影響していなかった場合
・業務への支障がほとんどなかった場合

においては、懲戒解雇などの厳重対処をするほどではなく、

このケースのように懲罰判断が覆される場合があるということがわかります。

ここでも本業での業務に支障をきたすレベルを問われていることから、副業をする際は、本業への支障を考慮することの大切さを知っておきましょう。

十和田運輸事件(東京地判平成13年6月5日)

十和田運輸事件【概要】

運送会社の運転手が年に1、2回の貨物運送のアルバイトをしたことを理由とする解雇に関して、職務専念義務の違反や信頼関係を破壊したとまでいうことはできないため、解雇無効とした事案。

十和田運輸事件【判決抜粋】

原告らが行った本件アルバイト行為の回数が年に1、2回の程度の限りで認められるにすぎないことに、証拠及び弁論の全趣旨を併せ考えれば、原告らのこのような行為によって被告の業務に具体的に支障を来したことはなかったこと、原告らは自らのこのような行為について会社が許可、あるいは少なくとも黙認しているとの認識を有していたことが認められるから、原告らが職務専念義務に違反し、あるいは、被告との間の信頼関係を破壊したとまでいうことはできない。

引用:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」

十和田運輸事件【考察】

解雇処分が無効となった事例です。

・副業回数が年に1、2回であったこと
・本業への支障がなかったこと

この判例においても、業務への支障がなかった点がポイントとなっております。

また許可・黙認されているとの認識があったまま、長く時間が経っていたことも理由として考慮され、裁判での解雇取り消し判決がくだされました。

この裁判から学べることは、就業規則に反しているからといっても、必ずしも解雇処分とならないということです。

裁判事例から学べること:「正当性を持って主張をする」大切さ

3つの裁判判例の結果を通して、一貫して学べることは

・本業への支障がない

この点において、個人の落ち度がない場合、処罰に関して、会社に対して正当な訴えができる可能性があるということです。

会社から伝えられたことは絶対ではありません。どんな処罰を受けようとも、正当性を持ってしっかりと自分の意見を主張することが大切だということを覚えておきましょう。

裁判事例から学べること:「本業への支障がない証拠」を準備しておく

本業への支障がなかった証拠を、できるだけ残しておきましょう。

100%の証拠を残すことは簡単ではありませんが、就業時間・売上などの記録・管理を徹底しておくことは大切です。

万が一のためにも、

「あくまで本業がメインであり、副業によって迷惑はかけていない」ことを裏付けられる準備をしておきましょう。

まとめ

過去に副業関連で裁判とになった判例を3つ紹介しました。

裁判事例から学べることは、会社が決定が絶対ではないということ。

副業規制は柔軟なものに変化していますが、まだまだ行う環境が十分整っているわけではありません。

最初のうちは問題が起こる可能性もありますが、本業への支障がなかった場合正当性を持つことができれば、しっかりと意見を主張をするべきであることを覚えておきましょう。